道の駅
ある道の駅のレストランで食事をしようとしたら、レストランの店員が、
「本日に限り、夕方で終了させていただきます」
と言ながら忙しそうにテーブルを拭きだした。
僕の脇には親子連れがいて、小さな坊やが、
「ソフトクリームが食べたい」
とせがんでいるのだが、
「もう、今日は終わりなんだって・・・」
と父親が説明している。
でも、ここのレストランの営業時間は午後7時までと看板に表示しているので中を覗いてみると、電気は煌々と点いていて、厨房からはおいしそうな匂いが漂ってくる。
まぁ、お店の人が終了と言うのでは仕方ないので、僕はお土産でも見ようと思って店内を歩きだすと、こんどは店の支配人やスタッフが一生懸命に店内の掃除を始めた。そうか、今日は道の駅自体がもう営業を終了するんだ・・・と思ったとき、今時、刑事も着ていないようなスリーピーススーツを着込んだメタボの二乗くらいにお腹が出ている脂っこいおっさんたち十数人が道の駅に入ってきた。
道の駅の支配人は玄関で深く頭を下げてすっかりドアボーイに変身しており、レッドカーペットさえ敷いてあればどこかのVIPが来たような待遇である。
中に入ってきたおっさんたちは道の駅の若い女性スタッフに声をかけたり、お土産の商品を手に取りながら店内をうすらかすらしているところを見ると、どうやらこの人たちは町の議員で道の駅を視察に来たみたいだった。
別に町の議員が道の駅を視察するのはいいけれど、営業時間中の道の駅を貸し切り状態にするは如何なものか。
議員たちは道の駅の中を一周すると、多分に議員のために貸し切ったのであろうレストランに入り、本来なら僕や小さな坊やのお腹に収まるはずのオムライスやソフトクリームを悠々と食べながら会議を始めた。
そんなインチキサミットみたいな光景を見た僕はなんだかとっても情けない気分になったのだけど、その瞬間、とってもいいものが僕の目に入ってきたのである。それはなんと道の駅の玄関の脇に、まさかのジュークボックスが置かれているではないか。
僕はさっそくどんな曲が入っているのか確認してみると、昭和の往年の名歌謡曲がたくさん入っていて、僕は二曲で100円のジュークボックスにコインを入れた。
♪あきらめました あなたのことは♪
それはとてつもない大音量だった。
インチキサミットが流れてしまうどころか、道の駅の屋根がぶっ飛びそうになるくらい、研ナオコの「かもめはかもめ」が道の駅に流れ、その大音量に驚いた中堅議員がレストランを飛び出し、僕のところにすっ飛んできた。
「おい、今、大事な会議をしているんだ!」
僕は目をつぶり、「かもめはかもめ」を鼻歌ぎみに歌って無視を決め込む。
「おい、この曲が終わったら、出て行ってくれよ」
道の駅のスタッフは遠くから僕らのやりとりを黙って見ているが、その冷たい視線の先は議員に向けてではなく僕に向いているので、この町の議員と道の駅のスタッフのバランス感覚がおかしいことに気づく。
そうか、ここは道の駅にお金を使う一般人より視察の議員が上客というやり方なんだな。だいたい客が備え付けのジュークボッくスにお金を払っているのにそれを邪魔するのも変だし、それが迷惑なら道の駅にジュークボックスを置かなければよいのだ。それでも議員の貸し切りにするのならば、 道の駅の玄関に「貸し切り」とか「閉店しました」といった表示をすればいいのだ。
そして僕は、議員連中と道の駅スタッフにこの曲を贈ることにした。
♪あなたの燃える手で あたしを抱きしめて♪
越路吹雪の「愛の賛歌」が道の駅に大音量で流れると、さきほどの中堅議員が僕のところにすっ飛んできた。
「おい、さっきの曲が終わったら帰れと言っただろう!」
僕は無言で「2曲100円」と書かれた文字を指差すと、中堅議員は道の駅のスタッフを呼びつけ、
「この曲が終わったら、コンセントを抜け!だいたい、こんな古い曲しか入っていないジュークボックスを置いたのは誰なんだ?」
と怒鳴り散らした瞬間、初老の男性が道の駅に入ってきた。
「遅刻だよ。すまんねぇ。おっ、若いのに越路吹雪の愛の賛歌をリクエストしているなんて、なかなかやるねぇ。実はこのジュークボックスはわしが道の駅に寄贈したのじゃ。どうじゃ、この機械はいいだろう? がはは」
今にもジュークボックスのコンセントを抜こうとしていた道の駅のスタッフは、慌てて雑巾でジュークボックスを磨くフリをして、さんざんジュークボックスの悪口を言っていた中堅議員は、
「あ、トイレ、トイレ」
と独り言を言いながら立ち去ってしまった。初老の議員は、
「久しぶりにリクエストしてみるか」
と言ってコインを入れると、なんと、研ナオコの「かもめはかもめ」が大音量で流れ、僕はニヤリとしながら道の駅を出ると、先ほどソフトクリームを食べ損ねた小さな坊やとお父さんが、♪かもめはかもめ♪と歌いながら駐車場を歩いていた。
「本日に限り、夕方で終了させていただきます」
と言ながら忙しそうにテーブルを拭きだした。
僕の脇には親子連れがいて、小さな坊やが、
「ソフトクリームが食べたい」
とせがんでいるのだが、
「もう、今日は終わりなんだって・・・」
と父親が説明している。
でも、ここのレストランの営業時間は午後7時までと看板に表示しているので中を覗いてみると、電気は煌々と点いていて、厨房からはおいしそうな匂いが漂ってくる。
まぁ、お店の人が終了と言うのでは仕方ないので、僕はお土産でも見ようと思って店内を歩きだすと、こんどは店の支配人やスタッフが一生懸命に店内の掃除を始めた。そうか、今日は道の駅自体がもう営業を終了するんだ・・・と思ったとき、今時、刑事も着ていないようなスリーピーススーツを着込んだメタボの二乗くらいにお腹が出ている脂っこいおっさんたち十数人が道の駅に入ってきた。
道の駅の支配人は玄関で深く頭を下げてすっかりドアボーイに変身しており、レッドカーペットさえ敷いてあればどこかのVIPが来たような待遇である。
中に入ってきたおっさんたちは道の駅の若い女性スタッフに声をかけたり、お土産の商品を手に取りながら店内をうすらかすらしているところを見ると、どうやらこの人たちは町の議員で道の駅を視察に来たみたいだった。
別に町の議員が道の駅を視察するのはいいけれど、営業時間中の道の駅を貸し切り状態にするは如何なものか。
議員たちは道の駅の中を一周すると、多分に議員のために貸し切ったのであろうレストランに入り、本来なら僕や小さな坊やのお腹に収まるはずのオムライスやソフトクリームを悠々と食べながら会議を始めた。
そんなインチキサミットみたいな光景を見た僕はなんだかとっても情けない気分になったのだけど、その瞬間、とってもいいものが僕の目に入ってきたのである。それはなんと道の駅の玄関の脇に、まさかのジュークボックスが置かれているではないか。
僕はさっそくどんな曲が入っているのか確認してみると、昭和の往年の名歌謡曲がたくさん入っていて、僕は二曲で100円のジュークボックスにコインを入れた。
♪あきらめました あなたのことは♪
それはとてつもない大音量だった。
インチキサミットが流れてしまうどころか、道の駅の屋根がぶっ飛びそうになるくらい、研ナオコの「かもめはかもめ」が道の駅に流れ、その大音量に驚いた中堅議員がレストランを飛び出し、僕のところにすっ飛んできた。
「おい、今、大事な会議をしているんだ!」
僕は目をつぶり、「かもめはかもめ」を鼻歌ぎみに歌って無視を決め込む。
「おい、この曲が終わったら、出て行ってくれよ」
道の駅のスタッフは遠くから僕らのやりとりを黙って見ているが、その冷たい視線の先は議員に向けてではなく僕に向いているので、この町の議員と道の駅のスタッフのバランス感覚がおかしいことに気づく。
そうか、ここは道の駅にお金を使う一般人より視察の議員が上客というやり方なんだな。だいたい客が備え付けのジュークボッくスにお金を払っているのにそれを邪魔するのも変だし、それが迷惑なら道の駅にジュークボックスを置かなければよいのだ。それでも議員の貸し切りにするのならば、 道の駅の玄関に「貸し切り」とか「閉店しました」といった表示をすればいいのだ。
そして僕は、議員連中と道の駅スタッフにこの曲を贈ることにした。
♪あなたの燃える手で あたしを抱きしめて♪
越路吹雪の「愛の賛歌」が道の駅に大音量で流れると、さきほどの中堅議員が僕のところにすっ飛んできた。
「おい、さっきの曲が終わったら帰れと言っただろう!」
僕は無言で「2曲100円」と書かれた文字を指差すと、中堅議員は道の駅のスタッフを呼びつけ、
「この曲が終わったら、コンセントを抜け!だいたい、こんな古い曲しか入っていないジュークボックスを置いたのは誰なんだ?」
と怒鳴り散らした瞬間、初老の男性が道の駅に入ってきた。
「遅刻だよ。すまんねぇ。おっ、若いのに越路吹雪の愛の賛歌をリクエストしているなんて、なかなかやるねぇ。実はこのジュークボックスはわしが道の駅に寄贈したのじゃ。どうじゃ、この機械はいいだろう? がはは」
今にもジュークボックスのコンセントを抜こうとしていた道の駅のスタッフは、慌てて雑巾でジュークボックスを磨くフリをして、さんざんジュークボックスの悪口を言っていた中堅議員は、
「あ、トイレ、トイレ」
と独り言を言いながら立ち去ってしまった。初老の議員は、
「久しぶりにリクエストしてみるか」
と言ってコインを入れると、なんと、研ナオコの「かもめはかもめ」が大音量で流れ、僕はニヤリとしながら道の駅を出ると、先ほどソフトクリームを食べ損ねた小さな坊やとお父さんが、♪かもめはかもめ♪と歌いながら駐車場を歩いていた。